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乳児脂漏性湿疹

乳児脂漏性湿疹とは

乳児脂漏性湿疹とは、生後2週間~3か月頃の赤ちゃんに多く見られる、皮脂の分泌が盛んな部位に起こる湿疹です。

主に以下の部位に症状が出ます。

好発部位 特徴
頭皮 黄色っぽいかさぶた、フケのような鱗屑(りんせつ)
眉毛・まぶた 黄色いかさぶた、ベタベタした付着物
額・頬 赤いブツブツ、ニキビのような発疹
耳のうしろ・首のしわ 赤み、ジュクジュク
わきの下・そけい部 赤み、皮むけ

多くは生後2~3か月をピークに自然に軽快し、生後6か月~1歳頃までにはほとんど目立たなくなります。決して珍しいものではなく、赤ちゃんの約7割が程度の差はあれ経験するといわれています。

ただし、「そのうち治るから」と放置してしまうと、かゆみで掻きこわして細菌感染を起こしたり、湿疹が長引いてアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症リスクにつながることもあります。適切な時期に、適切なケアを行うことが大切です。

乳児脂漏性湿疹の原因

1. 母親由来のホルモンの影響

赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいる間、母体由来の男性ホルモン(アンドロゲン)を受け取っています。このホルモンが皮脂腺を刺激するため、生後まもない赤ちゃんは大人の思春期と同じくらい皮脂の分泌が活発な状態にあります。

生後3~4か月頃になるとこのホルモンの影響が抜け、皮脂の分泌は一気に減少します。これが「時期が来ると自然に治る」といわれる理由です。

2. 皮脂の詰まりと酸化

過剰に分泌された皮脂が毛穴に溜まり、空気に触れて酸化すると、黄色っぽく固まったかさぶたになります。これが頭皮や眉毛に付着した「あの黄色いもの」の正体です。

3. マラセチア菌(常在菌)の関与

皮膚に常在するマラセチアというカビ(真菌)の一種は、皮脂を栄養にして増殖します。マラセチアが皮脂を分解する際にできる遊離脂肪酸が皮膚を刺激し、炎症や赤みを引き起こすと考えられています。

4. 赤ちゃんの皮膚のバリア機能の未熟さ

赤ちゃんの皮膚の厚さは大人の約半分しかなく、水分を保持する力も未熟です。「皮脂は多いのに乾燥もしやすい」というアンバランスな状態が、湿疹を悪化させる一因となります。

保護者の方から「私の洗い方が悪かったのでしょうか」というご相談をよくいただきますが、乳児脂漏性湿疹は生理的な現象であり、保護者の方の責任ではありません。どうぞご安心ください。

乳児脂漏性湿疹の症状

典型的な症状

  • 黄色~白色のかさぶた(痂皮):頭皮や眉毛にこびりつく
  • フケのような細かい皮むけ:頭皮全体にバラバラと
  • 赤いブツブツ(丘疹):額、頬、鼻のまわり
  • ベタベタした脂っぽい湿疹:耳のうしろ、首のしわ
  • かゆみ:較的軽いことが多いが、掻きむしることもある

注意が必要なサイン

以下のような場合は、単なる脂漏性湿疹ではない可能性があります。早めの受診をおすすめします。

こんなときは受診を 考えられること
生後4か月を過ぎても治らない・悪化する アトピー性皮膚炎への移行
ジュクジュクして黄色い汁が出る とびひ(伝染性膿痂疹)などの細菌感染
全身に広がっている 乳児湿疹の重症化、他疾患の可能性
かゆがって眠れない・機嫌が悪い 治療が必要な炎症
体重が増えない・下痢を伴う 食物アレルギーなど

アトピー性皮膚炎との違い

乳児脂漏性湿疹 アトピー性皮膚炎
発症時期 生後2週間~3か月 生後2~3か月以降
部位 頭皮・顔の皮脂の多い所 顔・耳・関節の内側など全身
見た目 黄色いかさぶた、脂っぽい 乾燥、カサカサ、ジュクジュク
かゆみ 軽い 強い
経過 数か月で自然軽快 慢性的に良くなったり悪くなったり

初期の見分けは専門家でも難しいことがあります。自己判断せず、一度小児科でご相談ください。

乳児脂漏性湿疹の治療

1. 洗浄によるスキンケア(基本の治療)

軽症の場合、正しい洗い方だけで改善することがほとんどです。当院では、赤ちゃんの状態に合わせた具体的な洗い方を、お伝えしています。

2. かさぶたの除去

固くこびりついたかさぶたは、ワセリンやベビーオイルでふやかしてから洗い流すことで、無理なく取り除けます。決して爪でこすり取らないでください。

3. 外用薬による治療

炎症が強い場合は、お薬を使用します。

  • ステロイド外用薬: 赤みや炎症を速やかに抑えます。赤ちゃんの弱い部位には適切な強さのものを、必要な期間だけ使用します
  • 抗真菌薬: マラセチアの関与が疑われる場合に使用します
  • 保湿剤(ヘパリン類似物質・ワセリンなど): 皮膚のバリア機能を守ります

「ステロイドは怖い」と感じていませんか?

適切な強さのお薬を、適切な期間、適切な量で使用すれば、ステロイド外用薬は非常に安全で効果的です。むしろ炎症を放置するほうが、皮膚のバリアを壊し、アレルギー発症のリスクを高めることがわかっています。

当院では、「なぜこの薬を使うのか」「いつまで使うのか」「どうやってやめるのか」まで丁寧にご説明します。ご不安な点は何でもお尋ねください。

4. 経過観察とフォローアップ

治療開始後、1週間後に再診していただき、効果を確認しながらお薬の調整を行います。良くなった後の「保湿だけで維持する」段階までしっかりサポートいたします。

ご自宅で気をつけていただくこと

【洗い方】 1日1回、丁寧に洗いましょう

  • お湯の温度は38~39℃のぬるめに設定
  • 石けん・ベビーソープをよく泡立てる(泡で出るタイプが便利です)
  • 手のひらで、指の腹を使ってやさしく洗う
  • ガーゼやスポンジでこするのはNG
  • 頭皮も指の腹で、シャンプーするようにマッサージ
  • シワの中も広げて洗う(首、わきの下、耳のうしろ)
  • 石けん成分が残らないよう、しっかりすすぐ
  • タオルで押さえるように水分を拭き取る

【かさぶたのケア】

  • お風呂の15~30分前にワセリンやオリーブオイルを塗ってふやかす
  • 入浴時に指の腹でやさしく洗い流す
  • 1回で全部取ろうとしない。数日~1週間かけて少しずつ
  • 無理にはがすと出血し、跡が残る原因になります

【保湿】お風呂上がり15分以内に

  • 洗浄後は必ず保湿剤を塗布します
  • 「皮脂が多いから保湿は不要」は誤りです
  • ティッシュが軽く貼りつく程度の量が目安
  • 朝の着替えのタイミングにも塗ると効果的です

【生活環境】

項目 ポイント
室温・湿度 室温20~25℃、湿度50~60%を目安に
衣類 綿100%など肌に優しい素材。厚着させすぎない
こまめに短く切り、掻き傷を防ぐ
洗濯 すすぎを十分に。柔軟剤は控えめに
寝具 枕カバー・シーツはこまめに交換

【やってはいけないこと】

  • かさぶたを爪や櫛で無理にはがす
  • ゴシゴシこすり洗いする
  • 「洗いすぎ」で1日に何度も石けんを使う
  • 自己判断で市販薬を長期間使い続ける
  • 「そのうち治る」と重症のまま放置する

当院からのメッセージ

赤ちゃんのお肌のトラブルは、保護者の方にとって大きな心配ごとです。「たいしたことないと言われたらどうしよう」「こんなことで受診していいのかな」と迷われる方もいらっしゃいますが、どうぞ遠慮なくご相談ください。

乳児期のスキンケアは、その後のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの予防にもつながる、とても大切な取り組みです。守山市の小児科、くまだキッズ・ファミリークリニックでは、

  • 一人ひとりのお肌の状態に合わせた診察
  • 洗い方・保湿の指導
  • お薬の使い方を「いつまで・どうやめるか」まで説明
  • 治るまでのフォローアップ

を大切にしています。

赤ちゃんのつるつるのお肌と、保護者の方の安心のために。お気軽にご来院ください。

ご予約・お問い合わせ

診察をご希望の方は、Webにてご予約ください。
乳幼児健診・予防接種の際にも、お肌のご相談を承っております。

※症状の写真をスマートフォンで撮影してお持ちいただくと、経過の把握に役立ちます。